株主の皆様へ

IR INFO

我が国の経済動向

当連結会計年度における我が国経済は、社会経済活動の正常化が進み外需の伸びやインバウンド需要の大幅な増加等もあって景気回復への動きが緩やかに見られました。しかしながら、円安傾向の想定以上の長期化や地政学的リスク等による物価高から消費者心理の冷え込みが危惧され、先行きは相変らず不透明な状況となっております。世界経済につきましても、インフレの蔓延や中国経済の停滞等から景気減速に対する懸念が続いております。

代表取締役社長 野尻 公平
代表取締役社長 野尻 公平

外食産業の動向

外食産業におきましては、需要の回復に加えて各社による価格改定の効果が一定程度あったことからトップラインは持ち直しつつあるものの、コスト上昇圧力は収まらず慢性的な人手不足もあり、予断を許さない経営環境のまま推移しております。更に深夜帯の利用客が減少する等、コロナ禍を経た生活様式の変化が定着し、加えて実質賃金の低迷から外食シーンでも節約志向や選別志向が高まっております。
このような状況の中、当社グループでは変化したライフスタイルに即した消費者の皆様に選ばれるブランド作りを強化すると共に、中期的な経営環境の変化に対応する為の取組みを継続しております。

営業施策

商品施策としましては、各ブランドとも集客力の土台となる主力商品の磨き込みと高付加価値食材等を活用したメニューによる体験価値の向上に努めております。その一例として、かっぱ寿司では、価格競争力の維持の為に100円(税込110円)の商品を100種以上取り揃え、更に付加価値強化の為に贅沢感のあるネタの使用や有名店とコラボレーションした商品を販売するといった活動を行っております。
販売促進施策としましては、牛角・大戸屋・かっぱ寿司といった国内で一定の店舗網を有するブランドでイメージアップを兼ねて人気タレントを起用したテレビCMを投下する一方、フレッシュネスバーガーがTBSテレビ系列の番組「ジョブチューン」の人気企画に参加し好評を得る等、PR活動にも引き続き注力しました。海外におきましても、各国の市場環境に応じてSNSを駆使したプロモーションを展開し、米国では牛角アプリを通じて「肉の日」企画等によって顧客の囲い込みを行っております。

店舗施策

お客様にとって心地良い空間を維持することを目的に経年劣化した店舗の改装を推進しており、かっぱ寿司のフルオーダー化による利便性の向上や、牛角の内外装のリフレッシュ及び店内作業の効率化も主要なテーマとしております。そして、適切なQSCAの水準を保つ為に営業人員の確保及び教育に注力し、配膳ロボットやスマホオーダー、セルフレジ等の活用にも継続的に取り組んでおります。
新店投資につきましては、変化した外食ニーズ及び商圏に対応すべく、業態・立地バランスの見直しとコロナ禍期間における直営店純減分の回復を主眼として積極的に取り組んでおります。具体的には、国内では牛角や大戸屋といったレストラン業態を郊外・ロードサイド中心に配置しており、海外では集客力が高いショッピングモールを主要立地として、牛角及びその派生業態を中心に増店を重ねております。

コスト上昇への対応

コスト上昇への対応としましては、「コロワイドMD研究所」の本格稼働を通じ、グループ各社の商品開発部門の統合によって食材の歩留まりの向上等の効率化を進めた上で、調達環境に応じたグランドメニューの変更及び商品価格の改定を行って参りました。更に物流の「2024年問題」への対処として、配送拠点数を全国16拠点から12拠点に集約し、食材配送頻度の最適化も進めて大半の配送センターで週6日配送を週5日に減少させました。

給食事業

中期ミッションの一つである給食事業につきましては、事業所や大学からの運営受託の拡大に取り組むと共に、主眼とする病院・介護施設の給食事業への参入に向けて、3月25日にはヘルスケア分野の給食受託を専業とする(株)ニフスの全株式を取得し、当社グループに迎えております。また、小ロットでの食材納品等、多様な配送ニーズに対応することを目的にヤマト運輸(株)と新たな物流スキームを構築し、給食事業で着実にノウハウの蓄積及び活用を進めております。

サステナビリティ

サステナビリティへの取組みにも引き続き注力しており、その一例として、グループ会社の全10工場で「食品リサイクル率100%」を達成しました。
加えて大豆ミート製造ラインの稼働率向上に努め、ステーキ宮やかっぱ寿司等のブランドで商品化をしております。更に農業生産法人に資本参加し野菜の安定供給を図る等、持続的な食材調達に向けてサプライチェーン全体を視野に活動を行っております。
また、女性リーダーの育成研修や多様な就業形態の提供による働きやすさの確保等、働く仲間の成長と多様性の尊重に係る活動も進めており、3月には「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。地域・社会への貢献策として取り組んできた「こども食堂」は利用者が延べ9万人を超えました。

店舗の出退店

店舗の出退店につきましては、直営レストラン業態を94店舗及び直営居酒屋業態を12店舗、合計106店舗を出店する一方、直営レストラン業態を48店舗、直営居酒屋業態を19店舗、合計67店舗を閉店しております。その結果、当連結会計期間末の直営店舗数は1,403店舗、FCを含めた総店舗数は2,583店舗となりました。総店舗数に占めるレストラン業態の比率は90%と着実に事業ポートフォリオの最適化を進めております。

2024年3月期の業績について

以上の取組みを進めて参りました結果、当連結会計年度の連結業績につきましては、連結子会社である(株)アトムの業績回復が遅れているものの、(株)レインズインターナショナルを中心とした他の連結子会社の業績が著しく回復していることから、売上収益が2,412億84百万円、事業利益が87億12百万円、当期利益が40億64百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が29億5百万円となりました。
当社グループのセグメント別の売上収益につきましては、(株)コロワイドMD852億55百万円、(株)アトム369億74百万円、(株)レインズインターナショナル997億25百万円、カッパ・クリエイト(株)721億97百万円、(株)大戸屋ホールディングス278億94百万円、その他76億38百万円となっております。
尚、各セグメント別の売上収益は、セグメント間の内部売上収益又は振替高等を考慮しておりません。

今後の見通しと展望

2025年3月期につきましては、米国における根強いインフレ及び高金利政策や中国経済の停滞等による世界的な景気減速感の高まりが懸念されます。我が国におきましては、大企業を中心とした高収益により経済活動は回復基調を維持するも、個人消費はコロナ禍明けからの需要回復の一巡に加え、実質賃金の伸び悩み等から節約志向・選別志向が継続するものと思われます。コスト上昇圧力や人手不足も収まらず、外食産業にとって楽観できない状況が依然として続くと予想されます。
このような状況の中、当社グループは中長期的な企業価値の向上を展望し、中期経営計画「COLOWIDE Vision 2030」に基づいた事業推進に努めております。国内外食事業を事業基盤としつつも市場の拡大が見込まれる海外外食事業や新規に参入した給食事業の成長を通じて、2030年3月期までに連結売上収益5,000億円の達成を目指し、企業価値の向上に努める所存であります。
国内外食事業につきましては、引き続きレストラン業態を中心とした出店、経年劣化した店舗の改装や業態転換に加え、M&Aによるシェア拡大を継続して行って参ります。4月1日にはデザート部門拡充の為に「チーズガーデン」「クリオロ」等の顧客評価の高いスイーツブランドを保有する(株)日本銘菓総本舗の全株式を取得し当社グループに迎えており、今後は国内主要都市及び海外への展開を含めた事業拡大を推進します。
海外外食事業につきましては、既に展開しているアジア諸国及び北米の事業強化に加え、未出店エリアの開拓を推進します。主に生産年齢人口に着目して成長余地が大きなマーケットを選択し、焼肉業態及び回転寿司業態を中心に出店を行う計画です。4月9日にUAEの有力企業であるChinese Palace Corporate Management社との合弁契約を締結した中東地域では、2030年3月期までに55店舗体制とすることを目指しております。
給食事業につきましては、(株)ニフスの株式取得を足掛かりとして病院・介護施設の給食事業への本格参入・事業拡大を進めております。外食市場での競争により培ったメニュー開発力や高い運営効率、セントラルキッチンを活用したミールキットによる調理効率の向上により、フードサービスカンパニーとしての優位性を活かした展開を目指します。
更に社会的な責任を果たして長期に渡って成長を続けるため、サステナビリティの推進にも注力し、当社として重点的に取り組む5つのマテリアリティ(重要課題)、「地球環境への貢献」「食の安全・安心の提供」「働く仲間の成長と多様性の尊重」「地域・社会への貢献」「経営基盤の強化」に基づいて引き続き活動して参ります。
株主の皆様におかれましては、今後とも変わらぬご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。